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中世ヨーロッパ史に関する個人的覚書
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講義5回目です。

グリム童話「あめふらし」を中心に、世界中の「謎かけ姫」にまつわる話でした。
姫や王女などの高貴な女性が結婚の条件として無理難題をふっかけ、失敗した求婚者を殺してしまうというパターンの話の裏にはなにがあるのか。
そして、最初の挑戦者は大抵の場合は失敗し、最後にきた挑戦者が成功する(まあ、成功したから最後になるわけですが)という構図には、なにが隠れているのか。

ここには動物の本能の根源である、卵子に群がる精子の構図が見え隠れしているとのことです。最初に卵子に辿り着いた精子は卵子の殻を破るのみで、二番目以降に到着した精子が見事に受精を果たすことが出来るという、自然界のシビアさを物語の中に垣間見ることができるそうで、言われてみれば確かに納得です。

更に考察を進めるならば、姫や王女という強者としての立場、結婚を拒否する姿勢=結婚したら自由がなくなる=結婚したら不自由人(=奴隷?)になると言う構図も気になります。
また、「謎かけ姫」という存在の神秘性と、それを打ち破り征服する男性という構図を考えると、(結婚前の)男性視点で見た「女性の神秘性」と、結婚(征服)した後の立場の逆転や神秘性の消失なども、ここに見ることができるように思います。

――――

少々話は飛びますが、以前のエントリでエーフェルシュタイン家の拠点のひとつとしてポレの町を紹介しましたが、ここはシンデレラの舞台としても知られる街です。
しかし、シンデレラは赤ずきんと同じくフランスのシャルル・ペローの物語を再構成したものなので、ポレが舞台であるはずがない、ゆえに「ははーん、町興しを目的とした嘘だな?」と思っていたのですが、新事実が浮上して来ました。

今回の講義の後半で紹介されたDVD「ジム・ヘンソンのストーリーテラー」にてドイツの民話として「運命の指輪」という物語があるのですが、これがものの見事にシンデレラに酷似しているわけです。
シンデレラと異なる点は、

①運命の指輪によって父親と結婚させられそうになり、逃げ出したお姫様が主人公
②魔法使いのおばあさんと、それによって生み出される小道具が存在しない
③ガラスの靴ではなく金の靴

あとは花嫁衣裳などの小道具に差が見えますが、おおむねシンデレラと同じです。
更に付け加えるなら、「魔法使いのおばあさんが登場しないので12時に魔法が解けるわけではないにも関わらず、どうして逃げ帰るのか」の説明がないことなど、物語の細部がシンデレラに比べて荒削りで、「いかにも原型」と言った印象がありました。

「ドイツのどこか」にこういった民話が伝わっているのだとしたら、ポレの街に関する話は大きく変わってきます。
「元々ドイツにあった民話がフランスに輸出され、シャルル・ペローによって物語としての完成度を高められ、ドイツに逆輸入された」と言う理屈が成り立つわけで、この「ドイツのどこか」がポレ市であった可能性は充分にあります。
ちなみに、こういった「物語の逆輸入現象」はいたるところで見られます。アーサー王伝説のエクスカリバーもその典型例です。

いずれにせよ、「シャルル・ペローが元ネタだったから、ドイツでの言い伝えは嘘」と考えるのは早計のようですね。
なかなか奥が深いものです。
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ドイツ・イギリスを中心に中世ヨーロッパの生活習慣、民俗学などを勉強しています。
最近はブリュ物語の翻訳ばかりやってます。
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